瀧嶋の目Takishima's Eye

瀧嶋 誠司
(株式会社オズペック会長)

大手ゼネコンに入社し、企業留学でMBAを取得した後、経営コンサルタント、教育サービス産業(上場)及び建設系企業(未上場)で取締役を10年経験する。2005年、MBOにより株式会社オズペックを設立し、代表取締役社長に就任。2023年12月より現職。
経営コンサルタント、経営企画・管理、人事・総務、営業・販促・営業管理、企業統治(取締役3社経験、計10年)

#_23どうなる建設業・・・2024年を予想してみる

2024年の建設業動向を予想する上で、現在の状況を整理してみましょう。

予想以上に建設業就業者数が減少しています。特に2019年、新型コロナ以降の減少率が大きく、1997年の685万人のピークから2022年時点で479万人と、なんと69%にまで減少しているのです。これに合わせて、技能者数の割合も減少しています。この減少率は、建設事業者数の減少率(84%)以上となっており、つまり、1事業者数当たりの建設就業者数が減少しているということになります。技術者を確保出来ずに倒産という話をよく耳にしますが、その現実がここに表れています。

よって、M&Aの流れは必然と思われます。PS三菱や西武建設など、2023年も大型のM&Aが実行されましたが、2024年はより大型のM&A、件数そのものが増加すると予想されます。より大きな建設会社が他業界の企業に買収されると言ったこともありえるかもしれません。

一方で、建設(建築)投資はどうなるでしょうか。国内のオフィス投資に変調が出てきています。建設投資の中心であった東京都内においても、オフィス空室率が供給過剰の目安である5%を、33ヵ月連続で上回っています。東京・汐留高層オフィスビル「汐留シティセンター」に象徴される海外勢の不動産売り越しが目立っています。一方、高層大型オフィスビル・商業施設の不動産開発はピークを迎えようとしており、一層の供給過剰が見込まれます。

写真はイメージです

加えて、電子商取引(EC)の増加に伴っての不動産投資のけん引役であった物流施設に、供給過剰感が強まっており、7年ぶりの高い空室率となっています。24年も高水準の新規供給が見込まれていて、10%近い空室率になるとの予想もあります。おそらく物流施設のニーズも、ピークを迎えることになるでしょう。

以上を反映して、東証リート指数も1800を割り込み下落傾向にあります。日本の経済状況下では金利上昇は景気回復の兆しというより不動産投資の重しになり、マイナス要因となります。下落傾向は当分続くと思われます。

建築分野において望みがあるとすれば、円安を背景とした、半導体に象徴される生産施設系の投資です。特に半導体は裾野が広いので、波及効果も高いと思います。現在建設中・計画中の、TSMC、マイクロン、ラピダス、PSMC、サムソン以外も、半導体素材や製造装置関連でも建設投資は続くと予想します。

写真はイメージです

土木を中心とした公共建設投資も減少傾向にあり、これ以上の公共投資依存には限界があります。土木大型工事も出尽くし感があり、かなり限られてきています(新幹線・防衛・風力)。これからは、補修・補強といった長寿命化がメインになっていくと思います。

これらに加えて、2024年は残業時間上限規制もあり、建設業においては激動の1年になると思われますが、働き手にとっては、悪い話ばかりでもないでしょう。残業時間が削減され、同時に休日出勤も是正され、人手不足の中、他業種より賃金増加率が伸びる可能性は高いと予想されます。また、企業文化の転換期を迎えている企業も多く、働きやすい会社に生まれ変わっていくかもしれません。

雇用の点では矛盾する話ではありますが、無人化の推進に成功した企業に商機があり、建物・不動産の価値向上に寄与した会社、機能向上とデザイン力があり、価格決定力のある会社が生き残っていくでしょう。ただ残念ながら、投資と価値決定(価格の主導権)は海外勢(海外の投資家や企業)に委ねられている状況は、変わらないと思います。

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