瀧嶋の目Takishima's Eye

瀧嶋 誠司
(株式会社オズペック代表取締役社長)

大手ゼネコンに入社し、企業留学でMBAを取得した後、経営コンサルタント、教育サービス産業(上場)及び建設系企業(未上場)で取締役を10年経験する。2005年、MBOにより株式会社オズペックを設立し、代表取締役社長に就任。
経営コンサルタント、経営企画・管理、人事・総務、営業・販促・営業管理、企業統治(取締役3社経験、計10年)

#_special大林組が「グリーンエネルギー本部」を新設
カーボンニュートラルを実現する再生可能エネルギーと水素が作る未来とは?

COMPANY DATA
株式会社大林組

株式会社大林組

https://www.obayashi.co.jp/
創業
1892(明治25)年1月
資本金
577.52億円
従業員
9,125人(2021年9月末現在)
事業内容
国内外建設工事、地域開発・都市開発・その他建設に関する事業、及びこれらに関するエンジニアリング・マネージメント・コンサルティング業務の受託、不動産事業ほか

1892年創業、日本を代表する総合建設会社である大林組。創業から130年を迎えた今では、国内のみならずグローバルにビジネスを展開する企業へと発展してきました。

2021年1月には「MAKE BEYOND つくるを拓く」というブランドビジョンを策定し、建設の枠を超えた新たな領域を拓いていこうとしています。

大林組は、2012年から再生可能エネルギー(太陽光、バイオマス、陸上風力)による発電事業に取りんできました。そして2021年4月1日には「グリーンエネルギー本部」を新設。今、大きな社会課題となっている「カーボンニュートラルの実現」に向けて、再生可能エネルギー事業を推進するとともに、次世代燃料として注目される水素の製造、販売も開始しています。

今後、このグリーンエネルギー本部は、大林組においてどのような役割を担っていくことになるのでしょうか。また、新たな分野への取り組みに対応するために、どのような人材を求めていくのでしょうか。常務執行役員 グリーンエネルギー本部長の安藤 賢一氏にお話を伺いました。


常務執行役員 グリーンエネルギー本部長安藤 賢一

お客さまのニーズに応える多様な発電方式

瀧嶋:
どうしてもゼネコンというと、ものを造るという視点で捉えがちですが、今回、新設されたグリーンエネルギー本部はこれまでの取り組みとはかなり分野が違いますよね。設立の経緯からご説明いただけますでしょうか。

安藤氏:
もともとは、2011年に立ち上げたビジネスイノベーション室がスタートです。この最初の担当役員が現在の社長の蓮輪(蓮輪 賢治氏)です。その新規ビジネスの中には、農業や漁業などの他に、グリーン電力もありました。東北の大震災の後、2012年に再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)が始まり、太陽光をメインに事業を開始しました。最初は、弊社の施設に太陽光パネルを張るところからスタートしました。

それ以降、現在では太陽光発電の発電量は約130メガワットとなっています。このほかにも、バイオマス、陸上風力、洋上風力、地熱、小水力への取り組みも進めており、稼働しているものを合計すると約200メガワットの発電量になっています。

規模を追うというよりも、お客さまのニーズに応えられるようにメニューを増やす狙いの方が大きいです。

大林組第1号案件 久御山太陽光発電事業所(屋根置き型)

瀧嶋:
こうしたグリーンエネルギーにフォーカスした組織というのは珍しいですよね。

安藤氏:
最近は石油業界などからの再生可能エネルギービジネスへの参入は聞きますけれど、この業界ではまだないと思います。

瀧嶋:
今後、大林組としてエネルギー会社を目指していくということなのでしょうか?

安藤氏:
いやいや、とてもそういう規模にはならないです。
弊社としては、いろいろな発電パターンをやることでお客さまのニーズに応えようというところです。

瀧嶋:
もともと、2012年に設立した株式会社大林クリーンエナジーという子会社がありますが、こちらとはどのような関係になるのでしょうか?

安藤氏:
大林クリーンエナジーの社長は私が務めているのですが、設備を資産として持ち、運営や管理を担っていく会社になります。今回新設した「グリーンエネルギー本部」は企画や計画をより本社で主導してやっていこうという意味合いもあります。

瀧嶋:
それにしても、いろいろな発電方式に取り組んでいらっしゃいますね。

安藤氏:
バイオマスは大月と神栖の二か所で取り組んでいます。大月は国産の未利用木材を利用しています。神栖は輸入ペレットとPKS(ヤシ種殻)を利用していますが、こちらの方が効率が良くて規模も大きいです。

地熱は北海道のルスツ地域と京極地域で開発を進めています。京極ではボーリングが進み、地熱のポテンシャルがあることの確認が取れたところです。

小水力発電は、日光足尾と新潟県津南町の清水川原というところで進めています。規模は小さいのですが、やはりメニューとして持っておくというのはあると思っています。

他にも全国各地の有望地点で、事業化の検討をしています。

ゼネコン初のバイオマス発電所 大月バイオマス発電所

ニュージーランドでグリーン水素を製造、販売

瀧嶋:
こうした発電事業とはまた別に、水素への取り組みもされています。こちらの状況について教えていただけますか?

安藤氏:
今はまだ実証レベルで、事業の手前の段階です。
例えば、昨年、九州のオートポリスというサーキットでトヨタの水素エンジン車に弊社の水素を提供しました。この水素は、大分県九重町の実証施設で、地熱由来の電気を利用して製造したグリーン水素になります。大きいところでは、ニュージーランドでも同様の方法でグリーン水素を製造しており、試験販売を開始しています。ニュージーランド政府からの支援もいただいており、年間100トンほど生産する計画です。

将来的には、ニュージーランドで製造した水素を日本に輸送したいと思っています。

水素はその製造方式によってはCO2を排出してしまうのですが、弊社が扱っている水素はグリーンエネルギーによって作られたグリーン水素のみです。
水素に関しては、かなりとんがったことをやっていると思っています。

ニュージーランド国内で初のメガワット級水素製造プラント

瀧嶋:
グリーンエネルギー本部はまだ発足して間もないとは思うのですが、グリーンエネルギーの将来像をどのように考えていらっしゃいますか?

安藤氏:
水素の時代というのは、おそらく2030年を超えてこないと、世の中に実装されないと思っています。それまでは地熱や小水力などの開発を足元で進めていく予定です。その一方で、太陽光電力などを外に販売するだけではなくて、自社向けの電力を賄うことで安定的な電源供給のサポートをできたらとも考えています。

瀧嶋:
大林組の長期ビジョン「Obayashi Sustainability Vision 2050」では、2050年までに大林グループ全体のCO2排出量をゼロにすることを、あるべき姿として謳っています。そこに繋がっていくということになりますね。

安藤氏:
もともと、インフラを造ることは、自然環境保護の観点からは必ずしもプラスになるとは言えない要素があります。これだけをやっていて企業の存在が社会的に認められるかというところに大きな課題意識を持っています。環境においても、やはり社会に対して貢献できることがあるだろうと。

ただし民間企業ですので、当然、ビジネスとして見ています。大林組には、建築、土木、開発、新領域という4本の事業の柱がありますが、新領域事業の大きな柱のひとつがこのグリーンエネルギービジネスなのです。

土木建築はどうしても時代に影響される不安定な部分があります。電力は皆さんが使うものですので、安定したベースロードとなる利益を得られる事業になれるのではないかと考えています。この土台を作ることで、土木建築分野がより自由にチャレンジできるようになればと思っています。

グリーンエネルギーに対応できる新たな人材像とは

瀧嶋:
そうなると、グリーンエネルギービジネスに対応できるような、これまでとは違った人材が求められます。

安藤氏:
発電所の寿命を考えると、撤去まで含めて40年のライフサイクルで考えています。建設は、仕事を取ってきて工事を終えるという数年単位のサイクルでしたが、発電所の運転や管理メンテナンスなどといった仕事は、これまでとは事業性が違うのです。なので、こういった世界に馴染んだ経験者に入っていただきたいなと思っています。

さらに言うと、こうした事業性を評価するような仕事は金融に近い知識が必要となりますが、なかなか弊社にはそういった人材はいません。プロジェクトファイナンスの経験者がいてくれると非常に助かります。

我々は中途採用のことをキャリア採用と呼んでいますが、今、積極的に採用しているところです。

瀧嶋:
そういう中で、グリーンエネルギー本部としては大林組の中でどのくらいの事業規模を目指していくのでしょうか?

安藤氏:
今、ちょうど中期経営計画を策定中ですけれども、まだはっきりしたことは言えないというのが正直なところです。ただ、事業の柱の一つと言う以上は、営業利益の一割程度の規模にはしていきたいです。建設業のベースロードとして、しっかり土台を作っていきたいと思っています。

すでにそれなりの金額を投資していますし、それらを資産として利益を生んでいる中で、うまく回していきながら、新しいものも開発していく。運営管理だけずっとやっているだけでは、いつかどこかで萎んでしまいますので。こういうことをアクティブにやろうとする人材が必要だと思っています。

グリーンエネルギービジネスに対応できる人材を求めていると語る安藤氏

瀧嶋:
2022年2月1日付けで「DX本部」も新設されました。

安藤氏:
BIM生産基盤の強化やデジタルを使った業務プロセスの改善などを目的としています。労働時間の効率化に向けた建設業界のDX化はもう待ったなしです。各現場のシステム面を支援する「デジタルコンシェルジュ」の取り組みも始まりました。

離職率が低い大林組。人を育てるモチベーションが高い。

瀧嶋:
大林組は離職率が低いですよね。社員の方が会社を悪く言うのを聞いたことがありません。

安藤氏:
人を育てようとするモチベーションは高いと思います。その分、会社への帰属意識は強いかもしれません。汗をかいて現場で頑張ることがいいことだと思っている人が多いのが、ちょっと困っているのですが。
ただ、うちは人が唯一の財産ですので、そこは強く意識しています。

瀧嶋:
最後に、求職者の方に向けてメッセージをお願いいたします。

安藤氏:
日本企業は終身雇用のイメージが強いですが、それがなくなってきていると感じています。やりたいことをやるために仕事を選ぶ人が増えることは、とてもいいことだと思っています。逆にそういう人材じゃないと、今はやっていけないのかもしれません。

人生100年時代と言われる今、30歳くらいまでに好きなことを見つけ、40歳ぐらいに食えるようになる感じでもいいと思うのです。
ただ、1年ぐらい働いただけでは分からないと思いますので、納得してできる仕事を見つけてもらえればと思います。

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