大手ゼネコンに入社し、企業留学でMBAを取得した後、経営コンサルタント、教育サービス産業(上場)及び建設系企業(未上場)で取締役を10年経験する。2005年、MBOにより株式会社オズペックを設立し、代表取締役社長に就任。2023年12月より現職。
経営コンサルタント、経営企画・管理、人事・総務、営業・販促・営業管理、企業統治(取締役3社経験、計10年)
瀧嶋:
まずはじめに、御社の事業概要を教えていただけますでしょうか。
本名氏:
我々の会社は、上下水道をメインに廃棄物や河川など、国や地方公共団体が行う公共事業の支援をするというのが主な業務です。昔は、公衆衛生を健全に保つ目的から、下水道の普及率を上げるための計画・設計が主な仕事でしたが、時代の変化とともに、老朽化対応や維持管理情報等を起点としたマネジメントサイクル対応へと変わってきました。また、公共団体の技術者も減少し、民間企業への期待も高まっています。それに伴い、業務領域もかなり拡大・変化してきていますね。
瀧嶋:
私が注目しているのは、御社の業績がここ数年、大きく伸びている点です。この要因をどのように捉えていますか?
本名氏:
我々は、業務の拡大に合わせて、さまざまな業務に対応する必要に迫られました。国も災害対策に力を入れるなどしており、仕事がかなり増えてきています。また、社内でもいかに効率的に仕事を進めていくかという意識が高まってきていて、社員の力量がかなり上がってきていると感じますね。それらが大きな要因かもしれません。
気さくに話してくださる、本名社長
瀧嶋:
社員の方とお話しさせてもらっても、レスポンスが早く、風通しがいい印象です。何か意識してやっていらっしゃるのでしょうか。
本名氏:
若手とベテランの距離感があまりないような社風だと思いますね。私が社内を回っていても、みんな明るく、よく話をしてくれます。私だけでなく、管理職も含めて、みんなフランクなんだろうと思いますね。
瀧嶋:
4月の組織改変で「水インフラソリューション事業部」を創設しました。この狙いを教えてください。
本名氏:
これは元々4つの部署に別れていた、DX推進室、プロジェクト推進室、マネジメント室、プランニング室を統合したものになります。今の仕事は、業務領域が多岐に渡るので、より迅速に意思統一できるようにするのが狙いです。 ICT等を活用しながら、PPPなどへの対応を強化していきたいと思っています。
4つの部署を統合した事業部を創設。迅速な意志統一でPPPなどへの対応を強化する
瀧嶋:
PPPはこれからも活発になっていきそうですよね。何か、最近の主な事例を教えていただけますか?
本名氏:
今、いわき市の下水道PPP事業において資源エネルギーを活用するプロジェクトに取り組んでいます。通常、PPPに関しては発注者支援という形で携わることが多いのですが、今回は事業者の一員として加わっています。こういったことは今後も積極的にチャレンジしていきたいですね。
また、宇部市でも合流式ポンプ場のDBO(Design Build Operate)に設計・建設で参加しています。維持管理は特別目的会社(SPC)を設立して運営するのですが、設計の立場として保守などに携わる予定で、新しい取り組みとなります。
瀧嶋:
御社の強みで言うと「AssetMan®(アセットマン)」という資産台帳管理システムもありますよね。
本名氏:
これは商標登録もしていまして、全国に展開しているところです。上下水道事業の日常業務で得られる情報を一元管理できる、上下水道共通のプラットフォームを構築しています。今後は、国が整備しているオープンデータを取り込んで活用するなどといった、機能拡張を考えているところです。
瀧嶋:
となると、デジタル系の人材が必要不可欠ですよね。
本名氏:
そういった人材が不足しているのは事実です。水インフラの知識もありながら、ICT等にも詳しいというのが理想なのですが、そういう人は非常に少ないため、自社で若手を育てていくしかないと思っていますね。
瀧嶋:
AIに学習データを読ませるにしても、どんなデータを用意すればいいのか判断するには、専門的な知識が必ず必要になってきます。
本名氏:
熊本市と取り組んでいるAI活用の共同研究では、そういったデータの整備や評価のところで弊社が協力しています。上下水道の漏水箇所の予測や機器の故障予測、道路陥没箇所の予測などをAIでできないかという研究です。IT専業の大手企業も参加しているのですが、プロジェクトをトータルでコーディネートするには、上下水道の知識に加え、ICT等の専門用語を上下水道業界で使われる言葉に翻訳する知識とスキルが必要だと考えています。
瀧嶋:
社内でも仕事効率化に向けたデジタル活用というのは進んでいるんですか?
本名氏:
今、いろいろな可能性を探っているところです。例えば、報告書を作るにしても、過去の膨大なデータがありますので、AIが参考になる報告書を教えてくれたら便利ですよね。また、RPAの導入も進めていますので、業務の効率はかなり上がるはずです。
さらには、IoT技術を活用した点検業務の効率化や設備の劣化予測、ビジネスインテリジェンスツールを活用したデータプラットフォームの構築など、業務効率化に向けたさまざまな取り組みを進めていきたいと考えています。
上下水道の知識があるからこそデータ活用ができる
瀧嶋:
どうしても建設コンサルタントと聞くと、残業が多いというイメージがありますが、最近はいかがでしょうか。
本名氏:
私が現場にいたころは、もう長時間の残業なんて当たり前という世界でしたが、今はだいぶ減りました。法律も変わりましたしね。当時に比べると、短い時間で質の良いものができるようになり、ずいぶん効率的になったと感じます。社員は大変だと思いますが、頑張ってくれてますね。
瀧嶋:
コロナの影響はいかがでしたでしょうか。やはり働き方は大きく変わりましたか?
本名氏:
元々、コロナになる前から、デジタルインフラの整備をする計画を立てていたのですが、コロナがきて、だいぶ前倒ししたんです。最初は手探り状態でしたけれど、今では、在宅で勤務できるような環境もこの1年で整いました。全国のお客様とウェブ上で会議ができるので、出張経費はだいぶ減りましたね。
ただ、我々の仕事は、お客様と対話しながら成果品を作っていくものなので、お客様の意向を十分に捉えられているのか、という心配はあります。今のところ大きな問題は出ておらず、きちんとコミュニケーションは取れているようですが、そこはとても大切なところだと思っています。
瀧嶋:
今後の会社の目指す方向を教えてください。
本名氏:
最近は、上下水道事業の経営戦略の策定などといった仕事もあり、昔とはかなり変わってきています。理系の知識だけでなく、法務や会計などといった知識も求められてきているんですね。時代時代によって求められるものが変わってくるので、それに応じられるフレキシブルな体制にしておかなければならないと思っています。
また、現在400人程度の社員がいますが、限られたリソースの中で最大の成果を出せるような、ものの考え方や仕事の進め方ができる組織を目指しています。
瀧嶋:
国もいろいろな施策を打ち出していますので、それにも応えていかなければなりませんね。
本名氏:
国土交通省は、災害に対応するための国土強靭化や、上下水道のカーボンニュートラル、インフラのDX化など本当に多岐に渡った方針を打ち出していますよね。これらにも我々は、しっかりと対応していかなければいけないと思っています。
国土強靭化、上下水道のカーボンニュートラル、インフラのDX化などに対応する
※画像はイメージです
瀧嶋:
そういった意味では、コンサルタントの資質として、どういったものが求められるのでしょうか。
本名氏:
頭を柔らかくして、切り替えが素早くできるような柔軟性ですね。「これしかできない」と言われるとちょっと困ってしまいます。
それと「レジリエンス」と言われるような、逆境に立ち向かえるしなやかさを持った人が向いていると思いますね。物怖じしない強い意志を持ち、未来を創造するといったイメージでしょうか。
瀧嶋:
上下水道事業は今、大きな転換期にきていると思います。あるのが当たり前と思われがちな上下水道インフラですが、それを未来永劫維持していくというのは、当たり前ではありません。また、今注目されているSDGsにもつながるビジネスでもあります。ぜひ、若者をはじめ、多くの方に興味を持って欲しい分野だと思いました。
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