#_special建築業界のデジタル化を目指すM&F
デジタルデータの価値理解と建築ワークフローの構築がBIM浸透の鍵

COMPANY DATA
株式会社M&F

株式会社M&F

https://m-and-f.jp/
設立
平成28年1月
資本金
65,000,000円(令和5年8月31日現在)
本 社
東京都江東区南砂2-36-11-9F

「建築デジタル、マジで、やる。」というミッションを掲げるM&F。BIMによる施工図の作成をメインの仕事としながらも、BIM人材の育成や派遣事業も展開しています。

人材不足が深刻化する建築業界において、デジタルの活用は避けられません。

そんな中でも、なかなかBIMが浸透しない現状において、M&Fが果たす役割に大きな期待が寄せられています。BIMのデジタルデータの価値を高めるためには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。代表取締役社長兼COOの守屋正規氏にお話を伺いました。


社長兼COO守屋 正規

高齢化が進む建築業界。デジタルの活用は不可避

OS-NAVI:
最初に貴社の業務内容を教えていただけますでしょうか。

守屋氏:
表向きには、建築総合アウトソーシング事業と謳っていますが、私がもともと現場での施工管理をしていたこともあり、施工図の作成などの仕事がメインとなっています。また、施工に特化したBIMモデリングにも取り組んでおり、BIMのアドオン機能の開発やBIM人材の教育、派遣事業なども行っています。

OS-NAVI:
ミッションとして「建築デジタル、マジで、やる。」という言葉を掲げています。その思いをお聞かせください。

守屋氏:
建築業界の人は、デジタルに対してハードルが高いという印象を持ってしまいがちです。ですので、なるべくフランクに表現したいと考えました。

創業時は、2DCADで施工図を作成していたのですが、より付加価値をつけなければならないと考え、2017年ごろから本格的にBIMに取り組み始めました。BIMを学びながら、建築業界の社会的背景を理解するにつれて、このままではもう業界全体がなくなってしまうのではないかという強い危機感を覚えました。高齢化が進む建築業界では、人手不足が大きな課題となっている中、デジタルの活用は不可避です。BIMで業界を救えるかもしれないとポジティブに捉えて、建築業界のデジタル化への取り組みを加速させたいと思っています。

OS-NAVI:
とはいえ、BIMを業務に取り入れるのは大変でしたか?

守屋氏:
かなり大変でしたね。なんのためにBIMが必要なのか、そもそも仕事が来るのかなど、当初は社内でもかなり議論しました。2017年ごろと言えば、スーパーゼネコンがBIMを導入したという事例が、情報として少しずつ出てきていたぐらいでしたからね。

OS-NAVI:
では、そういった部門から、少しずつ依頼が来たのでしょうか。

守屋氏:
いや、依頼は来ないんですよ。なので最初は、通常の施工図の予算の中で、裏でBIMを使って作るというところから始めました。

BIMで作った3Dの図面であれば、誰でも理解しやすいので、職人さんとの打ち合わせが短時間ですんだり、自動で数量を拾ってくれてデータとして表示されるのが便利だと感じてもらったりなど、そのメリットを少しずつ理解してもらいながら、クライアントを説得していきました。今でも、コミュニケーションをとりながら、適正な価格を交渉させていただいているというのが現実です。

BIMを業務に取り入れるのはかなり大変だったと語る守屋社長。

BIMを浸透させるには、ワークフローの確立が必要

OS-NAVI:
そうした努力を続けてきた中で、現在、BIMはどの程度浸透してきたと感じていらっしゃいますか?

守屋氏:
国土交通省のデータでは、半数近くの企業が導入済みという統計も出ていますが、現場レベルでは、まだまだ浸透していないという印象です。やはり使いこなせる人が少なく、各企業、人材の教育を進めている段階だという話もよく聞きます。

OS-NAVI:
BIMがなかなか浸透しないのはなぜでしょうか?

守屋氏:
今後、図面を見られる熟練の職人が減ってしまうのは間違いなく、そこをデジタルでフォローしなければならないのに、その危機感が足りないのが、大きな原因の一つだと思います。

そしてもう一つが、費用面の問題です。建築を発注するオーナーには、BIMのデータには大きな価値があり、それに見合った費用がかかるのだと理解してもらいたいです。BIMの場合、最初のデータの作り込みに費用はかかりますが、その後、データをきちんと使い込めば使い込むほど、BIMの方が安くなるはずなのです。

例えば、省エネ計算だけを個別に発注すると数百万円のコストがかかります。しかし、BIMであれば自動で計算してくれるので、人的ミスや手戻りもありません。また、ある大手小売企業は、自社の店舗設計をするBIM部門を独自に立ち上げました。これは、BIMのデジタルデータによって、店舗の電気代がいくらになるか、空調はどうすれば快適になるかなど、細かなシミュレーションができるメリットを理解しているからです。

デジタルデータの価値の認識が高まり、BIMにきちんと予算が付く流れが出てきてほしいと思っています。

BIM人材の育成にも力を入れている

OS-NAVI:
守屋さんは、あるインタビューで、BIMを浸透させるためには建築プロセスのワークフローを確立する必要があると提言されていました。そのためには、どのような取り組みが必要でしょうか。

守屋氏:
既存のフローを取り払ってフロントローディングの体制を整える必要があります。その前提として、全ての登場人物がBIMで取り組む必要があるといった提案、すなわち統一的ルール化、テンプレートの統一化、規格の統一化、あるいはそのためにボトルネックになる可能性のある中小受託組織・地方ゼネコン・専門工事業者側のBIM化促進を進める必要があります。
フロントローディングもコンピューターに任せられるところは任せてしまいましょうというのがその真意です。しかし、そのためには、テンプレートを用意するなど準備をしなければならないことがたくさんあって、それをワークフローに乗せることで、かなり効率化ができると思っています。

そのための取り組みとして、弊社では、BIMの国際規格である「ISO 19650」を取得しました。品質の高い仕事をするためには、こうした規格に沿うことはとても重要です。社内、社外ともに目線を合わせながら、ワークフローの大切さをこれからも発信していきたいですね。

BIMのプロジェクトをマネジメントできる人材が求められる

OS-NAVI:
海外ではBIMの浸透は進んでいるのでしょうか。また、日本政府の取り組みとしては、どういったものがありますか。

守屋氏:
やはり海外は、国による義務化が進んでいる印象があります。日本の建築業界は民間主導の要素が強く、まだそこまで至っていません。ただ、海外も温度感はさまざまだと思いますので、日本が遅れているという意識で仕事をしてはいけないと思っています。

また海外では、その建築物が投資対象として今後どのくらいの資産価値になるかを管理する際に、BIMデータを活用する事例も多くあります。ただこれを実現するには、我々が扱う施工図のデータとはまた違った資産価値算出用のデータが必要で、施工図データから自動的に変換するツールが作れないかという相談も受けているところです。

大阪万博でBIMの要件が提示されたのは画期的でした。これまでそういったものが出たことはありませんからね。また、国土交通省は「建築BIM加速化事業」という補助事業を始めています。年間80億円の補助金が出るということです。来年度も同じ予算で継続するという発表もありました。国もBIMを推進したいという意図があるのだと感じます。

建築とエンジニアリングの両方の知見とマネジメント力を磨く

OS-NAVI:
BIM人材が不足する中で、今後は、どのような人材が求められるでしょうか。

守屋氏:
弊社の本業は施工図の作成ですので、やはり基本的な技術は必要です。そうした教育は今後も継続していきます。一方で、BIMのデジタルデータを扱うためのプロジェクトマネジメントができる人材が、今後はより必要になってくるでしょう。建築とエンジニアリングの両方の知見があって、どういったデータが必要かをマネジメントできるスキルが求められます。「建築だけを知っていればいい」というわけにはいかないのが弊社の一番の課題です。

基礎的な技術から学んでもらいながらも、将来的にはマネジメントもできるようになってほしいというのが、私たちの願いです。そのためにも、もっと魅力ある企業になれるよう、地に足をつけた取り組みをしていかなければいけないと思っています。

OS-NAVI:
最後に、将来の展望をお聞かせください。

守屋氏:
BIMという言葉が先行しがちですが、我々はあくまで技術屋なので、常に高い技術を保持していきたいという思いがあります。どんなに先進的な技術を使ったとしても、それはあくまで道具でしかありません。その技術をいかに「使い切るか」というのが、我々の野望としてあります。

BIMを導入するにはかなりの費用がかかりますが、それを高いと思っているうちは、使い切れているとは言えないでしょう。そのコストを払っても、それを上回る利益が出ていれば安いものだと思えるはずです。

私は施工管理の現場出身なので、現場の職人さんの助けになるような、価値あるデジタルデータをこれからも作り続けていきたいと思っています。

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