OS-NAVI:
はじめに、御社の事業概要を教えてください。
久嶋氏:
「構造計算」、「構造図面作成」、「建築現場監理」の3つが柱となっています。我々は大型案件を大勢でやるというのではなく、小さな仕事に丁寧に対応することを得意としています。小回りが利くのが強みですね。
OS-NAVI:
会社を立ち上げたきっかけはどのようなものだったのでしょうか?
久嶋氏:
立ち上げる前の5年間ぐらいは、公務員をやっていました。公務員の仕事は、発注してチェックするというだけの仕事でしたが、プレイヤーとしてやっていきたいという思いがずっとありました。
もともと父親が構造設計の資格を持っていて、自分も構造設計に興味があったのですね。
30歳の時に一級建築士の資格を取って、35歳の時に独立しました。
公務員を辞めて食べていけるかという不安もありましたが、妻の後押しもあり決断したという感じですね。
OS-NAVI:
そこから順調に会社は大きくなっていますね。
久嶋氏:
最初は、公務員時代のお客様との繋がりからスタートし、そこから自然と伸びていきました。構造設計はやる人も少なくて、仕事に困っているような事務所はあまり聞かないです。お客様は意匠設計事務所がメインですが、レベルの高い事務所との仕事はやりがいがありますね。
OS-NAVI:
どのような案件が多いのでしょうか?
久嶋氏:
弊社の場合、駅前の大通りに面したビルなどではなく、一本、裏通りに入った狭い敷地の建築のオーダーが多いです。小回りが利くので、頼みやすいのだと思います。
私の最初の成功体験は、多くの木造三階建て狭小物件に対応できたことです。これが、私の一番の自信になりました。
戸建住宅(W+WRC造)
OS-NAVI:
意匠設計の方は、どのくらい構造設計を理解されているものなのですか?
久嶋氏:
それは、人によりますね。ベテランは詳しい方が多いですが、若手の新人はやはり苦手かもしれません。まずデザインをいただいて、構造設計をしたあと、適切な助言をさせてもらって、お互いの意見をすり合わせながら一つのものを作っていきます。
なるべくデザイン通りのものを実現したいのですが、それが難しいことの方が多いので、相手に説明するコミュニケーション能力も、構造設計士には重要なスキルだと思います。
ただ、デザインにこだわりのある意匠設計の方も多いので、制約のある中で、別の手段で実現できないかなどいろいろと考えなければいけません。結構、クリエイティブな仕事なのです。
OS-NAVI:
そういう意味で言うと、今、構造設計の業界では、どのような人材を求められるのでしょうか。
久嶋氏:
昔は、構造設計書を手で書いていて、先に理屈を考えてから計算するような流れでした。今は、完全に逆で、ソフトを使って計算書が出せるかどうかを確認し、そのあとで人間の考えを入れていきます。なので、若者でソフトに抵抗のない方が、どんなベテランよりも今は必要とされていますね。
ただ、資格が必要ですし、その勉強はしなければなりません。最後の人間が手を加えるところは、知識がないとできない部分ですので。
構造設計は、クリエイティブな仕事だと話す久嶋氏。
OS-NAVI:
ソフトはこれからももっと発展していきそうですか?
久嶋氏:
もうかなり来るところまで来てしまっている印象ですね。計算の部分は全部ソフトがやってくれて、最後の人間が対応するべき部分を、もう長くやっている感じがします。
それぞれの技術者が自分で考えて、配筋の量を減らしたり、コンクリートの量を減らしたりしていますし、ここの梁は必要ですよとか、ここの柱は抜けますよなどといった大きな提案は、人間じゃないと無理だと思いますね。
OS-NAVI:
構造設計事務所というと、激務のイメージありますが、残業がほとんどないそうですね。
これはどのように実現されているのでしょうか?
久嶋氏:
仕事の質や量をコントロールするためにも、なるべく良いお客様と付き合っていけるように意識しています。それが私の仕事ですね。
私自身20代は、先輩の付き合い残業で大変だったのです。20代の大切な時間を、それでだいぶ無駄にしてしまいました。なので、弊社の若い社員には絶対に同じ思いをさせたくないと強く思っています。
できるだけ自由な時間を増やしてあげて、資格の勉強をするでもいいですし、好きに過ごしてほしいですね。
OS-NAVI:
社員の皆さんは、快適そうに働いていらっしゃる印象です。選考にはどのような工夫をされていらっしゃいますか?
久嶋氏:
私が作ったオリジナルの小テストを受けてもらっています。決して落としたいわけではなくて、構造設計に興味があれば、最低限学んでくるであろう実務で求められる内容です。新卒の方は、できなくても最後までやってもらえれば、それで検討させていただきます。
共同住宅(RC造)
OS-NAVI:
将来的な展望はどのように考えていますか?
久嶋氏:
現在は8名ですが、将来は規模的に20名ぐらいにしたいなと思っています。そうなると、構造設計事務所単体としては、日本のトップクラスに入ってきます。
あとは、一人ひとりの社員が健康で何の心配もなく勤めてもらえるような会社にしていきたいですね。
OS-NAVI:
最後に、構造設計の仕事に興味を持つ求職者の方へメッセージをお願いいたします。
久嶋氏:
構造設計は、工学に基づいた専門知識が必要で、誰でも簡単に理解できるものではありません。ただ、その分、勉強のしがいがあると思います。
構造設計士は建物の医者のようなものです。建物は倒れないのが当たり前だと思われがちですが、それは構造設計がしっかりできているからこそなのです。
建築設計というと意匠設計を思い浮かべる人も多いかもしれません。でも、構造設計は、建物全体の施工費や安全性に直接関わる一番大切な部分だと思います。その思いを共有できる方がいれば嬉しいですね。
お問い合わせはお気軽にどうぞ。 転職・再就職の無料相談はこちらから