#_16アレクサンダー・ペイン監督の最新作『ホールドオーバーズ』を観賞しました

『サイドウェイ』やジャック・ニコルソン主演の『アバウト・シュミット』などの佳作で知られる、アレクサンダー・ペイン監督の最新作、『ホールドオーバーズ/置いてけぼりのホリデイ』を観賞しました。(副題のセンスの無さには閉口しますが・・)

アレクサンダー・ペインは脚本家からキャリアをスタートした映画監督であり、これまでに二度、アカデミー脚色賞を受賞しています。
『ホールドオーバーズ』に於いても、主人公たちの、ユーモアと皮肉に満ちたエッジの効いたセリフ廻しと、劇的な展開が無いにも関わらず、脚本がしっかりしているが故の、観客を飽きさせない老練な演出は、ペイン監督の真骨頂だなぁ・・と改めて感心しながら観賞しました。

アレクサンダー・ペイン監督の最新作【ホールドオーバーズ】

『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』Seacia Pavao / (C) 2024 FOCUS FEATURES LLC.

簡単なあらすじ

1970年、ボストン近郊。名門バートン校の生徒たちは、誰もが家族の待つ家に帰り、クリスマスと新年を過ごす。しかし留まらざるを得ない者もいた。
生真面目で融通がきかず、生徒からも教師仲間からも嫌われている古代史の教師ハナム。勉強はできるが反抗的で家族に難ありの生徒アンガス。
ベトナム戦争でひとり息子カーティスを失ったばかりの学生寮の料理長メアリー。
雪に閉ざされた学校で、反発し合いながらも、孤独な彼らの魂は寄り添い合ってゆく・・。

偏向的感想・見どころ

本作は時代背景が1970年代と云うことも有り、まるで、70年代に隆盛を極めた、アメリカンニューシネマの作品を見たような感覚にとらわれました。
(冒頭のユニバーサル映画のロゴを、あえて70年代のものを使用していたのも嬉しい限りでした)

それぞれに悩みや問題を抱える、3人の登場人物を演じた俳優達の演技も見応えが有ります。
主役である嫌われ者の教師、ハナムを演じたポール・ジアマッティは、ペイン監督とは『サイドウェイ』でもタッグを組んでいますが、頑固で偏屈で、そのうえ体臭がキツイ・・と云った面倒な人物を、曲者?演技で見事に演じ切っています。
料理長役を演じ、この作品で本年度のアカデミー助演女優賞を獲得した、黒人女優ダヴァイン・ジョイ・ランドルフの飄々とした、とぼけた感じの演技も、実にコミカルで印象的でした。

コメディー色の強い作品ですが、底に流れているものは厳しい現実で、非常にシビアです。
安易なハッピーエンドで幕引きせず、むしろほろ苦い感じのラストですが、観終わってしみじみとした気持ちにさせられる佳作でした。

例年の事ですが、夏を迎え興行的な観点から、子供向け、ならびに中身の薄っぺらい大作等が、相次いで公開される様ですが、小粒でも大人の鑑賞に堪えうる、脚本がしっかりした本作の様な作品が、製作~公開されることを初老の映画ファンとして切望する次第です。

興味がある方は、是非ご観賞ください。

ご一読いただき、誠に有難うございました。

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