#_15アカデミー賞国際長編映画賞を受賞した異色作【関心領域】を観賞しました

昨年の第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門でグランプリ、本年度・アカデミー賞で国際長編映画賞を受賞した、異色作・『関心領域』を観賞しました。

タイトルの『The Zone of Interest(関心領域)』は、第2次世界大戦中、ナチス親衛隊がアウシュビッツ強制収容所群を取り囲む40平方キロメートルの地域を表現するために使った言葉で、映画の中では強制収容所と壁一枚隔てた豪勢な屋敷に住む、収容所の所長とその家族の優雅で淡々とした暮らしぶりを描いています。

アカデミー賞国際長編映画賞を受賞した異色作【関心領域】

『関心領域』 (C)Two Wolves Films Limited, Extreme Emotions BIS Limited, Soft Money LLC and Channel Four Television Corporation 2023. All Rights Reserved.

簡単なあらすじ

空は青く、誰もが笑顔で、子供たちの楽しげな声が聴こえてくる。そして、窓から見える壁の向こうでは大きな建物から黒い煙があがっている。時は 1945 年、アウシュビッツ収容所の所長ルドルフ・ヘスとその妻ヘドウィグら家族は、収容所の隣で幸せに暮らしていた。
どこにでもある穏やかで平和な日常。しかし、壁ひとつ隔てたアウシュビッツ収容所の存在が、音、建物からあがる煙、家族の交わす何気ない会話や視線、そして気配から着実に伝わってくる。壁を隔てたふたつの世界にどんな違いがあるのか?平和に暮らす家族と彼らにはどんな違いがあるのか?そして、あなたと彼らとの違いは?

偏向的感想・見どころ

私見ではありますが、見終わった後の正直な感想は、退屈極まりない不快な作品、と云う印象でした。
製作側の意図や、主張したいテーマは理解できますが、余りにも奇抜な構成、抑揚が全くない展開に、途中で退場したり、明らかに寝ている観客も見受けられました。
(私も途中で寝てしまいました・・)

しかしながら、これまでのホロコースト或いはアウシュビッツを類材にした、『シンドラーのリスト』や『戦場のピアニスト』に代表される作品とは、一線を画しています。
『関心領域』は、最初から最後まで、これらの作品にありがちな、殺戮シーンや暴力描写は皆無です。

変わりに、この作品は【音】で戦慄や恐怖感を表現しています。
先ず、冒頭のシーンに驚かせられます。映画が始まって3~4分、真っ暗な場面が映し出されると共に、不快かつ意味不明な重低音が劇場内に鳴り響き渡ります。
はじめは、何のこっちゃ?と感じましたが、映画が進行するにつれ、その意図が次第に明らかになっていきます。 つまり、作中の【音】に神経を研ぎ澄ませよ、と云う事が・・

収容所長の豪邸のプール付きの庭では、無邪気にはしゃぎ廻る子供たちの『声』。
優雅で平和そのものの家族の営みの描写と同時に、背後の、高い壁を隔てた収容所からは、微かではありますが、『銃声や悲鳴に似た叫び声』が断続的に聞こえます。
そびえたつ高い煙突からは黒煙が立ち上っています。
前述の通り、私はこの作品を好きにはなれませんが、この残酷な対比の構図である印象的なシーンだけは、これからも頭から離れる事は無いと思います。

何れにしても賛否が真っ二つに分かれる作品であり、観る側の感性が問われるような映画です。
私はあまりお勧めできませんが・・興味が有る方はご覧ください。

ご一読いただき、誠に有難うございました。

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