猛暑も収まり、やっと秋の気配が感じられる気候になってきました。
初老の?映画ファンにとっても、大人の鑑賞に堪え得る作品が増えてくる季節となり、喜ばしい限りです。
第5回のコラムでも触れましたが・・昔の名画、或いは話題作をリバイバル上映する『午前十時の映画祭』にて、【エクソシスト・ディレクターズカット版】を先日、数十年振りに鑑賞しました。
奇しくも、この作品を演出した、ウイリアム・フリードキン監督が、去る8月7日、87歳で他界されました。
オカルト映画の古典とも云える本作『エクソシスト』、また、麻薬犯罪を扱った刑事物の先駆けとも云える、アメリカンニューシネマの傑作『フレンチ・コネクション』の監督として、広く世界の映画ファンに知られていた映画監督でした。
映画女優クリスの12歳になる娘リーガンは、ある時から何かに憑かれたかのようにふるまうようになる。彼女の異変は徐々に顕著になるが、病院の最新鋭の科学的な検査、或いは精神医学の権威が診察しても、はっきりとした原因は判明しない。やがて醜い顔に変貌したリーガンは緑色の汚物を吐き、神を冒涜するような卑猥な言葉を発するようになる。悪魔が彼女に乗り移ったのだ。その後、リーガンの前に初老の神父メリンと若き助手の神父カラスが訪れ、生死を賭けた悪魔祓いを始めるが……。
私は、強面の風貌にも関わらず、蚤の心臓なので、昔からオカルト映画やスプラッター映画の類は大の苦手です。。
その昔・・当時付き合っていた彼女と『13日の金曜日』を鑑賞した際、『ジェイソン』が突然出てきたシーンで、席を飛び上がらんばかりに驚く様を見て、『ケンちゃんって、気が小さいよね』と嘲笑された事がトラウマになっている様です・・。
そんなビビりな私が、『エクソシスト』を(初見の際に・・)鑑賞する覚悟を決めた?のは、他ならぬ・・前述の『フレンチ・コネクション』の監督作品であった点、また・・決して主役級とは云えないが、演技力の確かな実力派俳優達が配役に名を連ねていたからです。。
リンダ・ブレアー扮する、悪魔に取りつかれた愛娘リーガンを、何とかして救いたい、と必死に奔走する母親役に、佳作『アリスの恋』でアカデミー主演女優賞を受賞したエレン・バースティン、重い持病を抱えながらも、悪魔との壮絶な闘いに挑む、初老の神父・メリンを演じた、スウェーデンを代表する国際派俳優、マックス・フォンシドー。。
悪魔に取り憑かれた少女の周辺で起きた、不可解な殺人を調査する老刑事に、『波止場』や『十二人の怒れる男』で重厚な演技を見せた、アメリカを代表する名脇役、リー・J・コッブ・・。
なかでも、若き神父・カラスを演じた、ジェイソン・ミラーの演技が印象的です。。
愛する母親を自らの甲斐性の無さや不徳により、死に追いやり、神父を辞めようと思っていた矢先に、リーガンの母親から嘆願され、悩みに悩んだ挙句、悪魔と対峙する決心に至るまでを、病的とも云える演技で、見事に演じ切っています。。
このような、演技者たちの熱演と、キャラクターを際立たせた演出が・・ただただ観客を驚かせ、恐怖に陥れるだけの『お化け屋敷的』な薄っぺらいオカルト映画とは一線を画し、重厚な『人間ドラマ』に仕上がっているのだと、再見して強く感じた次第です。
リーガンの母親は、徐々に挙動不審が顕著になっていく娘の脳に異常が有るか、はたまた精神的に病んだのかと思い、MRI検査やその他の最新鋭の検査器具を用いたり、精神医学の権威に診てもらったりしますが、原因は判明せず、解決には至りません。
皮肉なのは・・結局、悪魔祓いと云う、古代的・前近代的な手法が娘を救った、という点です。
『エクソシスト』が製作されたのは50-年前ですが、それから現代に至るまで、科学・医学の分野は目覚ましい進歩を遂げています。
然しながら、むしろ・・心の病いを抱えた人は増えているかと思います。
人間の深層心理や心の病は、最先端の科学・医学をもってしても容易には解明、ならびに解決できない・・と云ったことでしょうか?
皆さんはどうお考えになられるでしょうか。
ご一読いただき、誠に有難うございました。
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