#_01鬼才 スタンリー・キューブリックの傑作ブラックコメディー【博士の異常な愛情】

私は例年、新作・旧作を問わず年間50本近くの映画を鑑賞しています。映画好きなのは非日常を体験でき、登場人物に感情移入できるからです。

ただ『制作費〇百億の超大作!』・・とか・・『天才子役の名演技!』『涙腺崩壊!』の様なたぐいの映画は苦手です。
還暦に限りなく近づいてきた事も有り、地味でも主題がはっきりし、役者の演技や脚本が優れている小品・佳作の方が最近の好みです。
題名【偏向的】の由来はこんなところからきていることを、ご容赦いただければ幸いです

G7・広島サミット開催で思い起こす60年前の映画

私としては今後、新作映画を中心とした鑑賞記を投稿していく予定ですが、タイムリーな話題や時事ネタが有った際は、それに関連した過去の映画のご紹介~鑑賞記も投稿させていただきたいと考えています!
5月19日~21日の三日間、広島で先進国首脳会議(G7)が開催されます。
昨年2月、ロシアがウクライナに軍事進攻を開始し、核兵器の使用を示唆する発言も出るなか、岸田総理が自らの地元でもある被爆地・広島での開催を決断した経緯があるようです。
そんな記事やニュースを見ているうちに、ある一本の映画が脳裏をかすめました・・

鬼才 スタンリー・キューブリックの傑作ブラックコメディー【博士の異常な愛情】

故スタンリー・キューブリック監督は完全主義者として知られ、代表作である【2001年宇宙の旅】、【時計じかけのオレンジ】【シャイニング】と云った作品が、世界中から評価されている異端の映画作家です。
【博士の異常な愛情】は米・ソ冷戦時代まっただ中、キューバ危機の2年後となる1964年に製作された核の脅威、或いは冷戦を題材にして、それらを徹底的に風刺したコメディー映画です。

簡単なあらすじ

アメリカ軍基地の狂信的なタカ派司令官が、ソ連の核基地の爆撃指令を発した。司令官の狂気を知った副官は、司令官を止めようとするが逆に監禁されてしまう。
米大統領は、ソ連と連絡を取って核戦争突入を阻止するべく事態の収拾を図る。しかし迎撃機によって無線機を破壊され、攻撃中止命令を受信できなかった1機が、ついに目標に到達してしまい全面核戦争に突入してしまう……。

偏向的おすすめポイント

主役である怪優、『ピンクパンサーシリーズ・クルーゾー警部』でお馴染みのピーター・セラーズが、【気弱なイギリス空軍副将校】、【生真面目な米大統領】、【大統領顧問を務める元ナチス科学者】の一人三役を見事に演じ分けています。この演技を見るだけでも本作は、十分に堪能できます。
また随所に、官や軍隊に於ける縦割り社会への皮肉・風刺のスパイスが効いており、笑いのなかにも色々と考えさせられる側面も持ち合わせています。
なお・・ついでで恐縮ですが、P・セラーズの、お勧めのもう一作は、【チャンス】と云う映画です。初老で知的障害が有る庭師が、ある事をきっかけに大統領にまで上りつめてしまう・・と云う、寓話的な映画です。こちらの作品もお勧めです!

印象に残るラスト

首脳たちの必死な事態収拾もむなしく、全面的な核戦争に突入するラストとなる訳ですが、監督のキューブリックは、決して『戦争反対』や『平和の尊さ』などを声高に訴えかけたりはしません。
むしろ、無機質にあっけないラストを迎えます。
原水爆実験による、不気味で巨大なキノコ雲の実際の映像が矢継ぎ早に淡々と流れ、映像のバックには往年の英の国民的歌手であるヴェラ・リンの【We’ll Meet Again】意味は「また会えるよね」・・が流れます。その歌声や歌詞が、情感あふれ明るく前向きである分、対比により余計に核への恐怖や、戦争のむなしさがひしひしと伝わってきます。
私のつたない文章力では伝わらないと思いますので、興味がある方はYouTube「博士の異常な愛情・ラストシーン」で検索してみてください。歌の和訳字幕も出ています。
古い映画で有るとともに、あまりメジャーでない作品でもある為、大きなレンタル店でないと、置いていないかもしれませんが、混沌とした世界情勢の今、是非ご覧いただきたい作品です!
ご一読いただき、誠に有難うございました。

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