大学卒業後、大手製薬会社にて約8年間MR業務に従事し、会社が合併の際に、早期退職。その後、静岡県にて、人材サービス会社に勤務して、正社員紹介で数十名、派遣社員として数百名の方のマッチングに関わる。現在、オズペックにて土木・建築業界を中心にコンサルタントとして従事。特に東北地方の土木関係の業務に強みを持つ。
東北の人口減少率は非常に高い。2021年10月と2022年10月を比較した減少率のワースト6県に、宮城を除く東北5県がすべて入っているのだ。生産年齢人口も減っており、全国に比べても人財不足はかなり深刻な状況だ。そのため、仕事が増えているわけではないが、有効求人倍率は高まるという現象が起きている
参考:人口推計(2022年(令和4年)10月1日現在)(総務省)
https://www.stat.go.jp/data/jinsui/2022np/index.html
おおよその復興関連事業が終わり、建設需要は減退中だ。公共事業が大幅に減少し、景気が不透明な今、民間も投資を控えている。そうした中で、ダンピングが目立つようになってきた。個社の特徴を生かした案件であれば、強気の価格設定もできるが、どの会社でもできるような仕事ばかりが増えた結果、価格でしか競争力を発揮できなくなってきた。
また、東北エリアの大きな課題は賃金水準の低さだ。東北6県は、軒並み全国平均よりも低く、下位に沈んでいる。
参考:都道府県別にみた賃金(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2021/dl/10.pdf
賃金が低いということは魅力ある会社が少ないということを意味する。同じ仕事をしても、安い給料しかもらえなければ、東京などの都市部に移動したいという気運が高まるのも当然だ。
だが、東北エリアは、豊かな自然があり、食事も美味しい。地元に戻って落ち着いて仕事をしたいと希望する人もいるだろう。しかし、そうした魅力ある会社が少なく、Uターン、Iターンの受け皿がないのが現状なのである。施工管理などの仕事は、現場に合わせて移動する必要があるため、一つの場所に落ち着くことがなかなか難しい。とはいえ、地場産業やインフラを守る人財が必要なのは確かだ。我々オズペックは、この課題を受け止めた上で、東北エリアでの仕事を希望する求職者の方に提案するという難しさを抱えている。
こうした、根本的な課題がある東北エリアだが、その中でも今後ニーズが高まると想定される分野を挙げてみよう。
●インフラ整備(土木・設備)
地震や豪雨など、自然災害の多い地域のため、道路や鉄道、電気の送電など、災害に強いインフラ整備が求められている。これは今後も慢性的に続くと考えられる。ただ、働き方は、それほど楽ではない。現場が移動すれば、当然自分も移動する必要がある。またインフラの場合は、昼間利用されていることが多いため、夜間の仕事になることも少なくない。その分、給料は高く、施工管理系でも年収5〜600万円はいくだろう。働き方を厭わず、高い報酬を求める人にとっては、魅力的に感じるかもしれない。
●半導体関連
世界的に成長が見込まれている半導体市場。東北エリアに半導体製造工場を建設する動きが活発化してきている。キオクシアホールディングスは岩手県北上市にNAND型フラッシュメモリーの工場を2023年に稼働させる計画だ。総投資額は2兆円にもなるという。また、CKDは、半導体製造機器を製造する工場を宮城県大衡村に新設。2023年1月に竣工した。そのほかにも、半導体向け工場の建設計画は多くあり、今後、東北地方の成長の鍵を握る可能性がある。求人面では、こうした工場の建設需要だけではなく、工場ができた後の施設維持管理の仕事も見込まれる。
参考:東北地域の半導体・エレクトロニクス関連産業の設備投資の状況(経済産業省)
https://www.tohoku.meti.go.jp/s_monozukuri/topics/pdf/220803_4.pdf
●再生可能エネルギー
経済産業省は、2030年の電源構成において、再生可能エネルギーを36~38%程度にする目標を発表している。ちなみに2020年においては、その構成比は12%だった。ここでも東北エリアに注目が集まっている。その自然環境を活かし、バイオマス、風力、雪氷熱、太陽光、地熱、水力等など、多様な新エネルギープラントが立地しているのだ。特に、日本の中でも最も風が強い地域の一つであるため、風力発電が盛んだ。陸上風力は、岩手県北部~青森県~秋田県北部と福島県沿岸南部(阿武隈南部)に集中している。海上風力は、計画検討中含め、岩手県沿岸北部~青森県沿岸~秋田沿岸北部を中心に開発が進む。ゼネコンも東北エリアでの自然エネルギー開発に対応すべく動いており、今後も市場は伸びる可能性はあるが、自然エネルギーの稼ぐ力の見極めが必要になってくるだろう。
写真はイメージです。
参考:エネルギー基本計画の概要(経済産業省)
https://www.enecho.meti.go.jp/category/others/basic_plan/pdf/20211022_02.pdf
東北エリアには、大間、東通、女川、福島第一、福島第二などの原発があるが、現在、稼働しているものはない。大間や東通など、建築中のものもある。また、厳しい安全基準をクリアするための工事を進める必要があり、仕事は多くある。しかし、特殊な資格も求められ危険のともなう仕事のため、報酬は高いが希望者は少ない。
●発注者支援業務(土木・建築)
建設コンサルタンツ協会のデータによれば、広義の発注者支援、施工監理、CM(コンストラクションマネジメント)、PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)などを含めた市場規模は、2011年の816億円から、2020年の1482億円と、10年間で82%も成長しているという。東北エリアの自治体は、慢性的な人手不足と震災復興が重なり、土木建設の発注業務が回らない時期があった。そのため、民間にその発注業務を委託するようになり、それが今は定着している。今後も発注支援の仕事は拡大していくものと考えられる。しかし、自治体の建設プロジェクトのCM業務を丸ごと請け負える技術力を持つ企業は、東北には存在しない。東京の大手建設コンサルなどに発注されているのが現状だ。
参考:令和4年度建設コンサルタント白書 資料15 建設コンサルタント関係5団体の部門別受注実績
https://www.jcca.or.jp/files/achievement/annual_report/pdf/2022/wp2022_siryo-4.pdf
<正社員>
東北に本社のある会社に、正社員で雇用されるのは難しいのが現実だ。それなりの規模で魅力ある企業は非常に限られるからだ。どの会社も人手不足で困っているのだが、教育に手間をかけられず、即戦力となる人材が求められる。スキル・経験・資格・人柄のすべてを要求されるケースが多いのが実情だ。ただ、こういったスーパーマン的な人財は、東京で働いた方が高い報酬が得られるだろう。それでも、どうしても東北エリアで正社員として働きたいという人は、粘り強く就職活動すれば満足のいく会社を見つけられるかもしれない。
<契約社員、派遣社員>
先に紹介した、安定して募集がある業務については、長期期間の派遣就業が見込める。社員で働くよりも高収入を得られる場合も多い。また、高齢でも就業が可能であることも魅力だ。実際に65〜70歳を超えても働いている人も多い。
東北エリアの建設業界の大きな課題は、ある程度の規模のある地場企業がないことだろう。東京の企業の支店が多くあり、元請けになることができない。すると、派遣社員や契約社員の仕事が増えてしまうのだ。
もちろん、小規模の企業でもいいから正社員として地場の仕事をやりたいという人も、就業は可能だ。ただし、求められるスキルは東京の企業以上になり、それにも関わらず、給与は低いという現実を受け入れなければならない。
プロジェクトベースでこれまでの資格や経験を生かして、高収入を得るという目的が明確な人にとっては、東北エリアの仕事はフィットするかもしれない。地元の近くで働きたい人や、自然豊かな東北エリアに魅力を感じ転職を希望する人は、ぜひチャレンジしてもらいたい。
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