今まで建設業では一般的な企業に比べて労働時間が長いと言われてきました。
実際、厚生労働省の令和3年1月分の資料によると、建設業における1ヶ月の総実労働時間は、調査した産業の平均と比較して約21時間多いことがわかります。
また、建設業の1ヶ月における出勤日数は18日と、調査産業の平均日数より約1.5日多く、休日も少ないと言えるでしょう。
月間実労働時間 | ||||||||
総労働時間 | 所定内労働時間 | 所定外労働時間 | 出勤日数 | |||||
時間(h) | 前年比(%) | 時間(h) | 前年比(%) | 時間(h) | 前年比(%) | 日数(日) | 前年差(日) | |
建設業 | 149.6 | -2.7 | 136.4 | -2.7 | 13.2 | -2.2 | 18.3 | -0.4 |
調査産業平均 | 128.3 | -2.2 | 119.1 | -1.9 | 9.2 | -8.0 | 16.8 | -0.3 |
時間(h) | 前年比(%) | |
建設業 | 149.6 | -2.7 |
調査産業平均 | 128.3 | -2.2 |
時間(h) | 前年比(%) | |
建設業 | 136.4 | -2.7 |
調査産業平均 | 119.1 | -1.9 |
時間(h) | 前年比(%) | |
建設業 | 13.2 | -2.2 |
調査産業平均 | 9.2 | -8.0 |
日数(日) | 前年差(日) | |
建設業 | 18.3 | -0.4 |
調査産業平均 | 16.8 | -0.3 |
厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和3年1月分結果速報」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r03/0301p/dl/pdf2101p.pdf
これは発注者との取引環境や現場での生産性向上の立ち遅れなど様々な要因から常態化・慢性化されてきたものですが、労働基準法やその関連法令においてもその実態を容認するように建設業の残業規制を除外してきた歴史があります。
しかしながら、働き方改革による2019年の法改正により、建設業においても2024年4月1日より他の業種と同様の労働時間の上限規制が施行されるようになります。
労働基準法では、労働者の労働時間について次のように規定しています。
(原則)
(1)1日8時間、1週40時間
(2)36協定を結んだ場合は、協定で定めた時間まで時間外労働可能
(3)災害復旧や大雪期の除雪など、避けることができない事由により臨時の必要がある場合には、労働時間の延長が可能
これが原則です。つまり基本的に(2)の「36協定」を労使で結ばなければ、(1)の法定労働時間を越えて労働させることはできません。
では、その36協定で決められる時間外労働の上限が、2019年4月の法改正以前はどのように規制されていたかというと、
(法改正前の36協定による上限)
(1)・原則、月45時間かつ年360時間
・ただし、臨時的で特別な事情がある場合、延長に上限なし(年6か月まで)(特別条項)
(2)・建設の事業は、(2)の適用を除外
としていました。
つまり、36協定による上限(1)は規定しているものの、建設の事業は除外とされていたため、実質的に建設業では36協定の締結をすれば、上限なく時間外労働が可能となっていました。
しかも、上記の上限規制は厚生労働大臣告示によるもののため、違反したとしても行政指導にとどまり、法的拘束力はありませんでした。
政府による働き方改革の一環として、労働基準法が改正され、時間外労働の上限規制が法的拘束力を持つ形で規定されました。大企業では2019年4月より、中小企業でも2020年4月より規制を受けています。
ただ、建設業においては前述した長時間労働が常態化・慢性化している特殊性から、5年間の猶予期間が与えられていて、2024年4月から規制を受けることになります。
では、法改正による時間外労働の上限規制はどのようなものかというと、以下の通りとなります。
(法改正後の36協定による上限)
(1)・原則、月45時間かつ年360時間
・特別条項でも上回ることのできない年間労働時間を設定
①年720時間(月平均60時間)
②年720時間の範囲内で。一時的に事務量が増加する場合にも上回ることのできない上限を設定
a.2~6か月の平均でいずれも80時間以内
b.単月100時間未満
c.原則(月45時間)を上回る月は年6回を上限
(2)・建設業の取り扱い
・施行後5年間 現行制度を適用
・施行後5年以降 一般則を適用。ただし、災害からの復旧・復興に限り、上記(1)②a.b.は適用しない。
※建設業においては、(改正前)は上記の規制も事実上なかった。
厚生労働省「働き方改革 ~ 一億総活躍社会の実現に向けて ~」https://www.mhlw.go.jp/content/000335765.pdf
上述した通り、建設業においても長時間労働への対応が待ったなしとなってきました。
従来の慣習によることなく、日々の労務・勤怠管理を厳密に行うようになっていかざるを得ません。そのために、各建設業事業者による、適正な工期設定や現場の作業効率向上のためのサポート支援ツールの導入の流れが進められています。上限規制の猶予期間が終了する2024年4月に向けて、建設業の労働時間が他産業と比べ特別に長いということはなくなってくるでしょう。
お問い合わせはお気軽にどうぞ。 転職・再就職の無料相談はこちらから